第76回入学式(令和4年度)

本日、この春のよき日に42名の新入生を迎えることができました。新たなステージに立つ新入生の皆さんに入学式で伝えた言葉(式辞)を以下に記載いたします。

式辞

新入生の皆さんご入学おめでとうございます。

ご参列の保護者の皆さま、お子さまのご入学を心よりお喜び申し上げます。

大阪府立桜塚高等学校 定時制の課程は ここにおられる42名の皆さんのご入学を心より歓迎いたします。ようこそ「夜桜」へ。

さて、いま保護者の皆さま、新入生の皆さんはどのようなお気持ちで居られるでしょうか。
おそらく、期待と不安の両方を同じくらいの大きさで感じておられることと思います。
新しい環境に入っていく時には、誰しもが緊張し、不安を感じるものです。
一方で、新しく始まる生活で何かが変わるのではないか、自分も変われるのではないかという期待も併せて持っておられることでしょう。

ここで皆さんに理解しておいていただきたい事があります。
それは、楽しく充実した時間や環境は決して周囲が準備してくれるものではなく、皆さん一人ひとりがその手で作り上げるものであるということです。そして、その為にはいくつかの努力が必要となります。
そこで、ご入学に際して、私から皆さんに3つの努力をお願いしたいと思います。

まず、ひとつ目は「お互い様の気持ちを持つ」ということです。
本校は定時制の高校ですので、様々な事情を抱えながら通学している生徒も多くいます。これまで何かに傷ついた経験のある生徒もすくなくありません。新入生の皆さんの中にもそういった人がいるかもしれません。そんな人たちが隣の席で学んでいるかもしれないことを忘れないでほしいのです。お互いを認め合い、尊重し、そして自分と同様に大切にすることを心がけてください。

そして、困ったときは「助けてほしい」と素直に言える、困っている人を自然に助けてあげられる、そんな「お互い様の気持ち」を持ってください。これから送る高校生活の中でその気持ちを大きく育てていってほしいと思います。

ふたつ目は「余白」を造ってほしいということです。
「余白」と表現したのは、この言葉には「今はまだ何も記されていないが、これからそこに何かが描かれる」という前向きな意味が含まれるからです。
「余白」をつくるには、「自分の感情と向き合うこと」が重要です。自分はいま何がしたいのか、どうなりたいのかを考えましょう。
ここで、自分をしっかりみつめることができればできるほど、そこには多くの「余白」が生まれます。そして、そこでは無限の可能性が広がります。

最後に「放っておく力」を持つことです。
なかなか人は物事をほったらかしにはできないものです。知らず知らずのうちに囚われてしまっていることも多いはずです。
放っておくことに罪悪感を覚えることもありますし、放ってはおけないことがあるのも事実です。周囲の評価を気にしたり、思い通りできない自分に苦しんだりしますし、終わってしまったことをいつまでもくよくよ悩んだり、逆に起きるかどうかわからないことを不安に思ったりするものです。

しかし、人は自分以外の人を決して思い通りにはできません。
また、過去は変えられないし、未来のことは誰にもわかりません。いま、申しあげたことはどれも自分では「どうしようもない事」なのです。「どうしようもない事」に囚われ、楽しく過ごせなかったり、苦しい思いをするのは、決して良い事ではありません。
こういう時こそ勇気をもって「放っておく力」を発揮してください。なかったことにするのではなく一旦棚上げにして意識や視界の外に追いやりましょう。これがうまくできれば人間関係も勉強や仕事もスムーズに進めることができるようになります。

私が申しあげた3つはこれからの高校生活において、皆さん一人ひとりに身につけていただきたい力ですし、楽しく幸せな人生を過ごすための処方箋になると思います。

夜桜での4年間を皆さん自身の力で素敵な時間にしてほしいと願っています。

  令和4年4月8日 大阪府立桜塚高等学校 定時制の課程

准校長 田中 徹