令和5年度 始業式 式辞
みなさん、おはようございます。新しい学年が始まりました。今年度はどのような年にしたいですか。3年生は勝負の年。2年生は高校生活の中で最も充実する年。1年生は大人の階段への第1歩。それぞれに喜びと困難が待ち受けている1年になることでしょう。本日の話のテーマは困難を抱えたときの視点の持ち方にしようと思います。
人にはどうしようもなく苦しい局面が訪れることがあります。必死で考えても答えが見つからない。私も長い教員生活の間に幾度となくそんな場面にでくわしました。今回のコロナウイルス感染症ではまさに答えのないことへ対応の連続でした。人はそんな時どのような視点で物事を見ていけばいいのでしょうか。虫の目、鳥の目、魚の目という言葉があります。よくビジネスの世界で使われます。「物事をあらゆる視点から見よう」という意味です。まずは虫の目。対象を虫の目で見る。目の前のことを集中して見ることです。細部にまでこだわってまずは対象を理解しようとします。ただし、目の前のことに集中し過ぎて、周りが見えなくなることもあります。それを補うのが鳥の目。鳥の目は景色を遠くまで広く見ることができます。あらゆる場所で何が起こっているのか一目瞭然。長所も短所もよくわかります。そして 仕上げは魚の目。海では、まっすぐ泳いでいるつもりでも、いつの間にか体が流されています。目に見えない潮の流れがあるからです。それを敏感に感じ取ってどの方向に流れていくのか、先を読む力が必要になります。すなわち、魚の目は時代の流れや世の中の流れを読む力です。「この先どうなるか?」未来を見通す目です。常にアンテナを張って予測して、流れを感じ、自分の向かう方向を決めるのです。この3つの視点をバスケットボールで例えてみましょう。今あなたは、オフェンス。目の前の相手だけを見て、抜くことだけを考えています。でもなかなかディフェンスを抜ききることは難しい。実は横には味方のプレーヤーがフリーになっているかもしれません。コート全体を俯瞰して見ることができれば、他の選手に的確にパスを出せるのです。また試合には必ず「流れ」があります。チーム力に差があっても、不思議とそれぞれに良い流れ、悪い流れの時間帯があるものです。良い流れを持続させ、悪い流れを断ち切る。それが勝負の分かれ目です。ゲームをコントロールできる選手というのは、試合の流れを読むことができる選手です。今は攻めるべきか、それとも時間を使うべきなのか。流れを読んでチームの方向性を決めます。全員が同じ意思を持ってチームの勝利のためにプレーしたほうが勝つのです。
以上の虫の目、鳥の目、魚の目をまとめると
①まずは虫の目で目前のことに集中する。
②次に鳥の目で広い視点で俯瞰する。
③さらに魚の目で流れを感じて未来を見る。
悩んで行き詰まったときには一旦立ち止まって、広い視野で物事を多角的に見る。目の前のことを「こなす」だけではなく、前後の関係性を俯瞰して見ると、今やるべき優先順位がわかります。そうすれば見えなかったものが見えてきたり、進むべき道が見つかるかもしれません。
さて今年は本校にとって創立150周年を迎える記念の年です。秋にはノーベル賞を受賞された吉野彰さんを迎えた記念式典もあります。皆さんにとってもそれぞれの思いが叶う、そんな学年になることを願っています。「一念通天」。