令和5年度 入学式 式辞
百花繚乱。色とりどりの花々が咲き乱れる季節となりました。皆さん、入学おめでとう。本校教職員を代表して皆さんの入学を心から祝福し歓迎いたします。
さて皆さんは中学時代、懸命に学習に励み、超難関校である北野高校に晴れて入学しました。高校に入学して、あれもやりたいこれもやりたいと希望に大きく胸を膨らませていることと思います。一方、高校に入ってなにをしたらいいのか友達はできるか、成績は大丈夫か、など少々不安を抱いている方もいることでしょう。本校には大阪府全域からトップの生徒が集まってきます。私はあらゆる面で本校は日本一の高校であると自負しています。そんな学校ですから入学後に思い通りの成績がとれないかもしれません。いや1番から360番までいる以上、中学校と同様の成績を収められる生徒の方が少ないのです。そのことで毎年、思い悩む生徒がいます。「桜梅桃李」という四字熟語があります。桜・梅・桃・李にはそれぞれに独自の美しさがあります。すべての生徒が「桜」になる必要はありません。他人と自分を比べることなく、それぞれが美しい花を咲かせるように個性を磨き、その世界におけるトップをめざし、社会に貢献してもらいたいのです。本校は生徒を束で見ることはしません。一人ひとりにはかけがえのない人生があり、自分だけのものです。一人ひとりを大切にするのが、いつの時代においても変わらぬ本校の教育方針です。その姿勢が学識やビジネスマンはもちろん、画家、作家、俳優等の多種多様な個性あふれる卒業生を輩出しているのだと思います。今年度、本校は創立150周年を迎えます。秋にはノーベル化学賞を受賞された吉野彰さんをお迎えする記念式典の計画も着々と進んでいます。そのような記念の年に皆さんは入学されたのです。
今、生きるこの世界を的確にとらえ、そこから大きな夢を紡ぐには小さな世界から脱却する必要があります。学問というのはそのためにあります。世界についての視野を広げていくのです。視野を広げていくというのはすでに知っている知識を量的に拡大するということだけではありません。不確定なことが充満し、正解のない世界の中で大切なことは、すぐにはわからない問題を手持ちの知識に当てはめてわかった気にならないことです。自分とは異質な他者と交流し、ものの見方、考え方、感じ方を学び、自分の世界を広げるのです。これまで当たり前にみてきた世界を別の観点からとらえなおすのです。そのために鍛えておくものはイマジネーション。すなわち想像力です。これまで考えも及ばなかったものを想像する力。まさに今現在、世界を襲っている新型コロナウイルスやウクライナへの軍事侵攻の問題もそうです。こうすればいいという確固たる正解はありません。複合的な課題が山積しています。問題を様々な方向から考え、課題を浮き彫りにして行ける想像力が必要です。想像力が相手の心を慮る方に向かえばそれは思いやりになります。未知の現象や物質に向かえば科学になります。サンテグジュペリは「星の王子さま」のなかで本当に大切なものは目には見えず、心で理解するものだと言いました。みなさん、北野高校で是非想像力を鍛えてください。豊かな想像力がリーダーにあれば、そもそもウクライナでいま起こっているような残虐な事態は発生していません。さて、それでは入学に際して、みなさんに想像力を働かして見てもらいたいことがあります。それは来年の4月の自分の姿です。では目をつむって5秒間想像してください。どうぞ。そこにはどんな自分がいましたか。輝いていましたか。キーワードは先ほど申し上げた「桜梅桃李」。それぞれの美しい花を咲かせてください。
最後になりましたが、保護者の方々に向けてご挨拶させていただきます。大切なお子様はしっかりと北野高校がお預かりしました。安心をお届けする心温まる取組みを行います。そして3年後、必ず希望の進路を実現し、豊かな人間性が花開くように教職員一丸となって教育活動に邁進することをお誓い申し上げて私の式辞といたします。
令和5年4月3日
大阪府立北野高等学校 校長 天野 誠