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令和4年度 後期始業式

 みなさん、おはようございます。今年度も後半がスタートしました。3年生にとっては高校生活の集大成となる大切な時間です。

 さて先週、安倍元総理の国葬が行われました。それに先立ち、朝日新聞が北野高校国葬事件と呼ばれる55年前の吉田元総理の国葬の際の本校の様子を社会面に載せました。国葬当日の午後、弔意を示すために学校は半日休校となりました。北野高校の生徒約20人はそのことを抗議するために翌日、文書を携えて大阪府教育委員会に出向いて行ったのです。生徒は文書を渡したのち、学校で授業を受けず、このようなことをした自分たちは退学処分になるのではないかと危惧しながら、学校に帰ってきました。しかし、そこで待っていたのは、ほかの生徒たちの温かい出迎えでした。そののち、保護者の呼び出しはあったものの大きなお咎めはなかったとの報道でした。今回の朝日新聞の論調は全体として本校の自由な校風を賛美するものでした。しかし、その報道がされた後、私のもとには賛否両論の意見が寄せられました。一方の意見は理由はともあれ、授業をボイコットしたことに変わりはなく、それが称賛されるのはおかしいというのです。また一方では北野高校の人間味豊かなエピソードであり、自由な校風がよくわかったとの意見です。このように同じ事象なのに人によって見方・考え方は大きく異なります。それぞれの人のよってたつ価値の基盤が違うからです。学校という組織の秩序維持という立場に立てば、けしからんとなります。また当時の世相や個人のやむにやまれぬ心情の発露と考えればその行為は許され、それを許す校風が賛美されます。結果として当時の学校は保護者を呼びだしたものの、それ以上の処分はしませんでした。

 さて、みなさんはどちらの考えに与しますか。どちらかが一方的に正しいことはありません。人は決断や選択をせまられる場合、自分の今までの知識や経験を総動員して決めます。その知識や経験に偏りがあればとんでもない過ちを犯してしまいます。いま、ウクライナで起こっていることはそのあってはならない一例と思います。ですから皆さんには様々な知識を持ち、様々な経験をしてもらいたいのです。数学だけを、国語だけを学習するだけでは不十分です。国社数理英芸家体情報課題研究,学校行事、部活動などあらゆる経験がみなさんの決断の礎を築くのです。本校は150年の歴史の中でそのような人間作りのノウハウを自然と築いています。まさしくそれが伝統の強味なのでしょう。皆さんが限られた高校生という時間の中でその時しか味わえないことを存分に味わい、未来において他の人を慮ることができ、社会のあり様に正しい判断ができる人間になる礎を「万里一空」の精神のもと、身につけることを願って後期の始業式にあたっての私のあいさつとします。