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入学式 式辞

山笑う春。若々しき春の気配が満ちてきました。新入生の皆さん、入学おめでとう。本校を代表して、心から祝福の意を表します。私は生徒の皆さんの前でお話しする時間をとても大切な時間として意識しています。直接皆さんに私の意思を伝える絶好の機会だからです。どんな話をすればみなさんのこころに届くかいつも思い悩みます。そんなことを考えながら家の近所の図書館を歩いていると一冊の本を見つけました。「君の膵臓をたべたい」という住野よるさんの本です。映画化されましたので知っている人も多いと思います。クラスでも人気の高い高校2年生の女子生徒が不治の病に侵されている。そのことをクラスメートは知らない。あまり目立たず、友人のいない男子生徒が病院で偶然そのことを知り、二人は自分の持っていないものを相手にみつけ、かけがえのないパートナーとなる。最後は意外な結末が待っており映画と原作では違うのですがざっと紹介するとそんなストーリーです。その中にとても印象的な場面があります。二人の会話の場面ですが、偶然病院で出会ったと主張する男子生徒に対して、女子生徒は違うと言います。そのまま彼女の言葉を引用しますと「偶然ではない。私たちは皆、自分で選んでここに来たの。君と私がクラスが一緒だったのも、あの日病院にいたのも、偶然じゃない。運命なんかでもない。君がまさにしてきた選択と、私がしてきた選択が私たちを会わせたの。私たちは自分の意志で出会ったんだよ」という言葉でした。まさにその通りです。みなさんは中学時代にこの北野高校を選択し、いまここにいるみんなと出会いました。様々な出会いは皆さんの選択の結実です。先週、京都大学の副学長である村上教授が本校で講演をしてくださいました。その時のキーワードは「出会い」です。村上教授は人生の様々な局面で出会う人々や研究のテーマを大切に生きてきたと話されていました。その結果として学術的分野で日本最高の賞である日本学士院賞を受賞されました。北野には多士済々の生徒がいます。それぞれの得意分野で突き抜けている生徒がいます。それぞれの居住地でみんながNO1です。みなさんはそんな仲間と今日から切磋琢磨していくのです。ワクワクしませんか。出会いを深めることで一生の宝ができます。そんな学校が北野高校です。北野高校の三年間、すなわち授業、学校行事、修学旅行、部活動などあらゆる教育活動でここにいる皆さんが協働し、結論を出し、成果を上げていくのです。その都度、立ち止まってまずは一人で思考し、次にみんなと協働し、見えなかった解答を見出する訓練を重ねていくのです。人生は思考の連続です。用意された答えはもうありません。自分で考えるしかないのです。

さて合格者集会の折、私は後ろからずっと皆さんの様子を見ていました。気になる場面がありました。保護者の方とみなさんの二人で来てもらっていたのですが、先生方が話す内容を生徒がメモを取らず、保護者の方が一生懸命書き留めておられる姿です。中学まではそれでやってこれたのかもしれません。しかし、高校ではそんなことでは、やっていけません。これからの学習は正解がはっきりとわかることばかりではありません。ひたすら自分の頭で考え、行動しなければならないのです。ひとりひとりが考え、自分の考えをぶつけて議論し、解答を見出していくのです。保護者の方に一方的に頼る関係からは脱却する必要があります。入学にあたってそのことだけは、はっきりと申し上げてきます。

さて保護者の皆様方、お子様のご入学、誠におめでとうございます。本日は皆様方にとっても最も晴れやかな日であると思います。本日の新入生の姿は皆様のご努力の賜物です。こんなに立派に成長しました。お子様のこれからの三年間は、変化と成長が最も激しい時期です。お子様は北野高校がしっかりとお預かりします。どうぞご安心ください。
 さて、新入生の皆さん、いよいよ夢と希望のそしてちょっぴり不安な高校生活が始まります。皆さんの未来は皆さん自身が創ります。大きな困難も待ち受けていることでしょう。それをひとつひとつ着実に乗り越えていってください。入学に当たってひとつの言葉を送ります。

「艱難汝を玉にす」。

令和四年四月一日    大阪立北野高等学校 校長 天野 誠