本日、第72回卒業証書授与式を行いました。あいにくの天気となってしまいましたが、多くの参列の皆さまにおいでいただき、卒業してゆく生徒たちの晴れやかな顔を見送ることができました。
この場を借りてご参列いただいた皆様に御礼申しあげます。ありがとうございました。
さて、本日の卒業式で私から卒業生に送った式辞を以下に掲載いたします。卒業生のみなさんにも、是非、もう一度読んでもらえたらと思います。ご卒業おめでとうございます。
式辞
3月を迎え、厳しかった寒さがようやく和らごうとする今日、この夜の学び舎から28名の生徒の皆さんが未来に向けて旅立とうとしています。
本日 第72回卒業証書授与式を挙行いたしました所、コロナ禍の影響も残る中、保護者の皆様にも多数ご参列いただきました。誠にありがとうございます。そしてお子様のご卒業を心よりお祝い申し上げます。
ご入学以来、教職員一同、ご期待と信頼に添うべく全力を傾け、教育活動に邁進してまいりました。至らぬ点もあったかと思いますが保護者の皆様のご理解をいただき、今日ここに卒業式を迎えられることに感謝申し上げます。
ただいま、大阪府立桜塚高等学校 定時制の課程を修了した28名に卒業証書を授与いたしました。
卒業生の皆さん、ご卒業、おめでとうございます。卒業生の皆さんが、この卒業に至るまで本校で積み重ねた日々の努力にあらためて敬意を表したいと思います。そして皆さんはこの間支えていただいた、保護者の皆さまや先生方をはじめ、お世話になったすべての方々に感謝の意を示し、これからの皆さんの成長の糧としてください。
さて、本校は、昭和12年に大阪府立第十四高等女学校として創立され、昭和23年の学制改革で大阪府立桜塚高等学校となり、同年定時制の課程が設置されました創立84年目となる府下でも有数の伝統校です。
今年度卒業される72期の卒業生の皆さんも、本校での教育活動を通じてこれまで受け継がれてきた校風や精神を学び、着実に成長して来られたことと思います。これからも本校で学んだことを胸に、これまで経験した一つひとつを礎として、今後の人生においても自らの力を最大限に生かしてほしいと願っています。
そんな卒業生の皆さんへのお祝いのメッセージとして、ある方が大切にされ、実践されていた言葉を贈りたいと思います。その方とは中村 哲さんとおっしゃる方です。ご存じでしょうか。
中村先生は内戦の続くアフガニスタンで医師として現地の人々を支援し続けた方ですが、残念ながら2年前に武装グループの襲撃により現地で命を落とされました。日本でも大きなニュースになっていましたのでご存じ方もおられるかもしれません。
中村先生はアフガニスタンが干ばつに襲われ多くの人々が命の危険にさらされた際に、なんと独学で土木技術を学び、用水路を整備し、農地を再生させ、65万人ともいわれる人の命を救った方です。
この中村先生が大切にされていた言葉に「一隅を照らす」という言葉があります。これは天台宗の開祖である最澄が「山家学生式(さんげがくしょうしき)」という書物の冒頭に記した言葉で、正式には「一隅を照らす これすなわち国の宝なり」というものです。
その言葉は「社会の片隅にいようとも その片隅から社会を照らすために働くことは とても尊い事である」という意味になります。中村先生の生き方がまさにそうだったと感じています。
かつての私の勤務先が中村先生とご縁があり、この言葉を知ることになりました。この言葉を聞いた時、まさに人としての生き方の指針であると感じたので、是非とも卒業生の皆さんにお伝えしたいと思いました。
周囲の人に認められ評価されることはうれしく誇らしい事でしょう。
しかし、そのことを目標に行動すると認めてもらえない時に不満を感じたり、意欲をなくしたりして苦しく感じるのではないでしょうか。人に認められたいから行動するのではなく、いま自分の立っている場所からしっかり「一隅を照らす」行動を起こしてほしいと思います。それこそが社会の宝になり、自分自身にとっても貴重な宝になるはずです。
卒業生の皆さんがこの夜桜で学んだことを胸に「一隅を照らす」の精神で、それぞれの場所からこの社会を照らしてくれることを願ってやみません。大いに期待しています。
最後に、本日、御参列いただきました皆さまのご健勝とご多幸を願いますとともに、本校へのより一層のご支援、ご鞭撻を賜りますことをお願い申し上げ、私の式辞といたします。
令和4年3月1日
大阪府立桜塚高等学校 定時制の課程 准校長 田中 徹