卒業式の式辞

卒業式式辞

 寒さの中にも校庭の木々には淡い色彩が溢れ、春の訪れを感じさせる今日のよき日に大阪府立成城高等学校定時制の課程第12回卒業式を挙行いたしましたところ、公私何かとご多用にもかかわりませず、東大阪高等職業技術専門校の津田校長先生をはじめ、ご来賓の皆さま、関係者の皆さま、保護者の皆さまのご臨席を賜り、厚く御礼申しあげます。

 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。

 皆さんは、この成城高等学校の定時制の課程で学んできました。勉学はもちろん、学校行事や生徒会活動その他さまざまな活動に取り組み、成城高校定時制の歴史に新たな一ページを書き加えてくれました。皆さん一人一人の努力に、称賛の拍手を送りたいと思います。  

 今、皆さんへ卒業証書を渡しました。この卒業証書を見て、まずはこれまでよく頑張ってきた自分自身をほめてください。ほんとうによく頑張りました。そして、皆さんを支えてくれた、保護者、職場の仲間、周りの友達、そしてお世話になった先生方へ、ありがとうの言葉や心からの感謝の気持ちを伝えて欲しいと思います。

 この卒業は、皆さんにとって、ひとつの目標であったことでしょう。この目標は達成しました。しかしこれからも皆さんの未来は続いていきます。また次の目標や夢を持ち、その実現のために、これからも自分らしく歩みを続けてください。

 成城高校には「和親協同」という校訓があります。「皆で仲良くお互いを理解しあいながら、力・心をあわせて物事にとりくむ」というものです。 

 卒業生の皆さんは、生徒会活動や行事、クラブ活動において、この「和親協同」の精神を本当によく表してくれました。とても印象に残っています。特に文化祭の模擬店や作品には、クラスの力と心をあわせて取り組んだことがよくわかる素晴らしいものでした。そして、集合写真撮影の時の皆さんの笑顔、ステージの部で教員のダンスを心から楽しんでいる姿を見て、皆さんの仲間を大切にする気持ちや思いやり、学校との絆を感じることができました。

 そんな皆さんが歩み出すこれからの社会は、大きく変化し、予測不可能とまで言われています。ただ、どんな状況にあっても個性を大切にし、自分の良さに気づき、自分を大切にして欲しいと思います。それができれば、自分の周りの人の良さにも気づくことができるでしょう。

 これからは、自分を生かし、まわりのひとの良さや個性にも気づき、周りの人と協力し高めあって社会のなかで活躍してほしいと思います。

 さて、皆さんは野球解説者の野村克也さんを知っているでしょうか。現在は80歳を超えておられますが、元プロ野球選手で、戦後初の三冠王や歴代2位の通算657本のホームランを打つなど活躍され、引退後も複数のプロ野球チームの監督を歴任されました。実力社会のプロ野球の世界で輝かしい記録を打ち立てた野村さんは、さぞかし才能に恵まれた天才選手なのだろうと思われがちですが、実は京都府北部の田舎の公立高校出身で、運よくプロ野球の入団テストに合格しましたが、ブルペンキャッチャーという裏方要員としての採用だったそうです。しかも1年目で来年は契約しないと宣告されましたが、何度もお願いした結果、何とかあと一年だけは様子を見てあげようとなったそうです。

 野村さんは、担当の人が話の分かる人でとても運が良かったと思ったそうです。そしてせっかくもらったチャンスを活かすためには、人の何倍も努力しなければいけない。19歳でそれに気づかせてもらったことが、本当に運が良かったと言っています。

 そこから人一倍努力をしたそうですが、あるとき、同じような努力をしているのに結果が出ない選手がいるのはどうしてなのだろうと感じたそうです。そして努力を重ねていく中で、正しい努力と正しくない努力があるのではないかと気づいたと言います。

 人は人との関係性の中で生きていく。人の気持ちを理解し、きちんと準備をして努力をすることで、その努力を見ていてくれる人が必ず現れる。そしてそういった人と人との縁が幸運を呼ぶきっかけになると感じたそうです。そこからは運を呼ぶための正しい準備、正しい努力とはなんだろうと考えながらプロ野球選手として取り組んだ。その結果、80歳を超えても大好きな野球にかかわって生活できている、運に恵まれることができたと言います。

 皆さんには野村さんの大好きな有名な言葉を紹介します。

   「心が変われば行動が変わる。

    行動が変われば習慣が変わる。

    習慣が変われば人格が変わる。

    人格が変われば運命が変わる。」

 皆さんがこれから進んでいく先には、途中で困難なことに出会うこともあるでしょう。時にはぶつかって立ち止まり、あるいは回り道をして別の進路を探す必要があるかもしれません。それでも、夢や目標を忘れずにその実現に向かって準備をし、努力をしてほしいと思います。その努力を必ず誰かが見ていてくれます。人と人のつながりが生まれることで、運に恵まれるときが来るのだと思います。この成城高校で学んだ皆さんなら、きっとできるはずです。頑張ってください。応援しています。

 保護者の皆さん。関係者の皆さん。本日は誠におめでとうございます。ここに卒業式を迎えた、お子様の姿をご覧になって、感激もひとしおかと存じます。定時制高校で学び、そして卒業するということは、簡単なことではなかったと思っております。本人たちの努力もさることながら、皆さんに支えられ、励まされ、応援をいただきながらこうして卒業を迎えました。本校の教育の推進にご理解とご協力を賜りましたことを、この場をお借りしまして厚くお礼申しあげます。また、お子さまを通じて生まれましたこのご縁、引き続き、成城高校定時制の課程発展のためにお力添えくださいますようお願い申しあげます。

結びになりますが、ここに卒業を迎えた皆さんの門出を祝し、今一度、「おめでとう」の言葉を送り、私の式辞といたします。

「卒業おめでとう」

                        平成31年2月28日

                          成城高等学校定時制の課程校長 麻野克己